TCFDの遠心ファンベンチマークテスト

TCFDを用いた遠心ファンのベンチマークテスト


ベンチマーク概要

TCFDを用いて遠心ファンCFDシミュレーションに関するベンチマークテストに関するレポートとなります。このプロジェクトはZVVZ MACHINERYとCFDSUPPRORT社が共同で実施し、目的はCFDシミュレーションソフトウェア、TCFDを用いて実測データとの比較を行うこととなります。また本プロジェクトでは定常計算/非定常計算結果比較も実施しています。


ベンチマークパラメータ

  • 流速:60 [m/s]

  • 作動流体:非圧縮空気

  • 回転数:1200 [rpm]

  • メッシュ数:2.8Mセル

  • インペラ直径:1.0 [m]

  • 基準圧力:1 [atm]

  • 標準圧力比:1.03

  • 基準密度:1.2 [kg/m3]

  • 粘性係数:[1.8×10-5Pa・s]

  • 定常計算CPU時間:6コア時間/ケース

  • 非定常計算CPU時間:20コア時間/流量ケース


前処理

CFDシミュレーション用のメッシュ作成にはサーフェスモデルを基準とし、自動メッシュ生成プロセスを用いて作成しました。(外部フォーマットのメッシュを読み込むことも可能です)ベンチマークに用い垂れた遠心ファンCADモデルはSTEP形式であり、形状特徴が非常に複雑なCADデータであったため、オープンソースソフトウェアSalomeを使用し、形状のクリーンアップを実施、モデル簡略化を実施しました。他のCADシステムフォーマットの場合、このような前処理を実施する必要はないかもしれませんが、通常、表面形状からメッシュ生成を実施する場合、メッシュ品質は形状特徴に大きく依存するため、注意が必要です。意図的ではない小さな形状特徴で、重要ではない場合はには形状の簡略化を実施することが、結果としてより良い品質のメッシュ生成、計算精度をもたらします。計算に用いる最終形状モデルは、個々のサーフェスモデルへ効率的に分割し、STLファイルフォーマットの3D曲面として出力しました。


メッシュ生成

計算に用いるメッシュは、snappyHexMeshを使用して作成しました。円筒座標系メッシュをファンインペラの初期メッシュとして使用し、壁面に境界層メッシュ(5層)を作成しました。

mesh.png


TCFD条件設定

TCFDにて計算条件の設定を行います。基本的な設定はデフォルト、もしくは推奨設定を用います。

●アプリケーション:ファン

●定常計算/非定常計算

●非圧縮性流れ

●k-SSTモデルによるRANS乱流モデリング

●コンポーネント数:2

●メッシュ数:4.6Mセル

●入口条件:流量指定

●出口条件:平均静圧

●インペラとのインターフェース:AMI

●インペラと外部コンポーネントとのインターフェース:ミキシングプレーン(10ビン)

 計算実行は自動ワークフローで実施が可能であり、定常計算/非定常計算の両者で実行しました。一般的な回転機械の性能予測同様に回転数一定(1200 [rpm])にて11点の流量ケースを実施、性能曲線を予測しました。TCFD®は計算実行中に計算結果を取り出すことが可能であり、任意の物理量収束状況を確認することが出来ます。計算が十分に収束したと判断した場合、途中で異なる流量ケースへと計算を移ることが可能です。


後処理

TCFDには、効率、トルク、流量、力、モーメントなどの必要な評価量を自動的に抽出する組み込み型の後処理モジュールがあり、計算実行時にすべての評価量が自動的に計算されます。計算を実行するたびに、それらすべての評価量がHTMLレポートにまとめられ、レポートは計算実行中、常に更新されており、いつでも確認が可能です。また3次元可視化にはParaViewを用いました。


result1.png

result2.png


まとめ

TCFDを用いた遠心ファンのCFD解析は、測定データと非常によく一致しています。また、全体的な傾向として非定常計算は定常計算よりも良好な結果を得ていると判断出来ます。