CAESES®による遠心圧縮機インペラの最適化事例

遠心圧縮機は、コンパクトでありながら圧力比が高い特徴をもっており、航空機や船舶の分野におけるシステムに広く使用されています。インペラ設計は遠心圧縮機の重要な設計項目であり、圧縮機性能に大きな影響を与えます。本事例では既存の遠心圧縮機インペラモデルに対して、CFDツールと組み合わせたCAESES®を使用し、自動性能最適化を実施した例となります。


基本条件

  • 流体                    空気

  • 流量                    0.8 [㎏/s]

  • 回転数                100,000 [rpm]


この最適化は回転速度、流量を制約条件とし、効率、圧力比の最大化を目的関数としています


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自動最適化の流れ

遠心圧縮機の性能最適化には、インペラ形状を変更させ、CFDで性能を見積もる必要があります。CAESES®ではインペラのパラメトリックモデルを効率的に作成し、複数の異なる形状特徴を簡単かつ柔軟に生成するための制御を実行可能とするCAD環境を構築します。CAESES®から出力されたモデルに基づいて、自動メッシングとシミュレーション解析プロセスをCFDツール(今回はCFX)に組み込み、シミュレーション結果によって得られた性能をCAESES®が実装する最適化アルゴリズムにフィードバックすることができます。得られた計算結果を用いてCAESES®は最適化アルゴリズムを用い、性能を自動的に最適探索します。


モデル作成と変形制御

最初にCAESES®を用いてインペラのフルパラメトリックモデルを構築します。


  1. インペラ子午面上におけるランナーの輪郭線と入口出口位置を定義

  2. 流路はスプライン曲線、直線+円弧など、様々なカーブ特徴を採用(ここでは、直線+円弧を採用)

  3. インペラプロファイルにおけるキャンバーラインは、θまたはβ分布曲線に従って生成

  4. インペラの高さ方向に沿って複数のプロファイルを定義し、組み合わせてインペラの3D形状を形成

  5. キャンバーラインに対する厚み分布曲線を定義し、最終的なプロファイルを形成

  6. 作成したインペラモデルに対し、インペラ間の角度差をパラメータとして設定することも可能

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設計変数の変更イメージ:


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CFDソフトウェアとの連携および自動最適化

CFDソフトウェアにおける計算条件は次のように設定されています。


流体

理想気体

乱流モデル

SST

メッシュ数

約80万

境界条件

入口全圧、出口流量

回転速度

100,000 [rpm]

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自動計算プロセスでは、メッシュ作成、プリ処理、ソルバー、ポスト処理を自動実行するためのスクリプトファイルを作成、これらのスクリプトファイルをCAESES®で実行することで自動最適化プロセスを構築します。


今回はCAESES®にてSobolアルゴリズムを用いた実験計画法を実施し、7つの主要設計変数、合計30ケースを実行し、設計空間の応答を確認しました。



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応答結果


各モデルの計算結果は次の通りです。

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図中の赤い丸は、今回得られた結果での最良のモデルを示しています。得られた結果を初期モデルと比較すると全圧比と効率が改善しました。



初期モデル

最適モデル

改善程度

流量(kg/s)

0.8

全圧比

2.22

2.387

7.50%

効率

0.8757

0.9213

5.20%



今回のモデルと初期モデルの比較図を示します。(グレーが今回のモデル、緑が初期モデル)

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まとめ


  1. CAESES®を用いて遠心圧縮機のインペラ形状を対象とした最適探索をCFDソフトウェアと組み合わせ、全圧比は7.5%、効率は5.2%向上しました。

  2. CAESES®におけるパラメトリックモデリングは、インペラ形状を効率的に制御することができます。

  3. CAESES®を介して外部シミュレーションソフトと連携、作業を自動化することが可能となります。

  4. CAESES®に実装されている最適化アルゴリズムは、設計変数の影響を判断し、自動最適化を実行することが可能です。

  5. 遠心圧縮機のボリュート形状に対し、パラメトリックモデルを構築することで圧縮機全体モデルの最適化を実行することも可能です。