遠心圧縮機のベンチマークシミュレーション

このケースでは、TCAE®の流体計算モジュールであるTCFDを用いた遠心圧縮機のベンチマークシミュレーションについて紹介します。

TCAE開発元であるCFD SUPPORT社とターボチャージャーの製造を行うチェコのCZ a.s.社が共同で実施したこのベンチマークプロジェクトは、遠心圧縮機のシミュレーションを通したTCFDの評価、解析結果の実測データ比較、を目的として実施されました。


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ベンチマークテストの主要パラメータ


・流速: 50 [m/s]

・流れモデル: 圧縮性

・回転数: 90000 [RPM]

・メッシュモデル: 80万 [cells]

・インペラ直径: 110 [mm]

・作動流体: 空気

・参照圧力:1 [atm]

・圧力比: 4.0

・参照密度: 1.2 [kg/m3]

・粘度: 1.8×10-5[Pas]

・CPU時間: 19 [core.hours/point]

・乱流モデル: k-omega SST


前処理


当初、遠心圧縮機のCADモデルは、STEP形式のデータでした。

STEPファイルは構造上、CFDシミュレーションには複雑すぎる形状となるため、形状データに対して前処理を行う必要があります。

このプロジェクトでは、オープンソースソフトウェアであるSalomeを使用して、形状データのクリーンアップを行いました。

解析用の形状データとするため、シミュレーションへの影響が少ないパーツの除去や、モデルに存在するすべての穴を塞ぐ作業を実施し、水密性のある個々の解析領域を作成しました。

この作業は、シミュレーションの結果に直接大きな影響を及ぼすため、非常に重要な項目にとなります。


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クリーンアップ後の形状データ

 

メッシュモデルの作成


ボリュームメッシュをSalomeのNetGenで作成し、その後OpenFOAMユーティリティであるpolyDualMeshを使用することで、CFD解析用の多面体メッシュを作成しました。

TCFDには、OpenFOAM形式のメッシュデータとして読み込まれます。

TCFDは、外部メッシュデータとしてMSH、CGNSの読み込みが可能であり、メッシュ作成モジュールTMESHによる自動メッシング機能もあります。


TCFDのシミュレーション設定


・シミュレーションタイプ: Compressor

・定常解析

圧縮性あり

・乱流モデル: k-omegaSST

・解析領域(Components): 2

・メッシュモデル: 80万 [cells]

・入口境界条件: Total Pressure

・出口境界条件: OutletVent

・インペラ流入側インターフェース条件: AMI

・インペラ流出側インターフェース条件: Mixing Plane (10 planes)

・3種の回転条件: 60、80、90 [kRPM]

・シミュレーションケース数: 33


シミュレーションは、60、80、90[kRPM]の3つの回転条件に対して各11種の出口条件を設定することで、33ケースの定常計算が実行されました。


後処理


TCFDには、効率、トルク、流量、力、モーメントなどの自動計算/保存の機能が備わっています。

設定された物理量はシミュレーション中に計算され、自動作成されるHTMLレポートにまとめられます。

視覚的な後処理は、GUIに組み込まれているParaViewの様々な機能を活用することで多くの可視化データを取得することが可能となります。


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実測データとの結果比較



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解析結果の比較では、実測データ、TCFD解析結果、商用CFDツール結果が用いられ、各回転数と流量に対する効率値と全圧比の結果が対象となっています。

比較グラフからも分かるように、TCFDの結果が実測データと非常に近い値を示しており、ほとんどのプロット位置において適切な結果を得ることができました。

また、他商用ソフトウェアと比較しても、同等の結果を取得することができており、精度の観点からも有効なソフトウェアであることを確認することができました。