ペルトン水車射出ノズルのCFDシミュレーション

このケースでは、TCAE®を用いたペルトン水車射出ノズルのCFDシミュレーション』について紹介します。

このケースの目的は、ペルトン水車の回転部でなく、流体が射出するノズル部の流れの評価を行うことになります。

重要な評価項目は、ペルトン水車の分配されたノズルの、「流量が均等に分散された状態を維持すること」「圧力損失を回避すること」です。


ペルトン水車・・・流体の衝撃を利用した水車。ノズルから射出した流体を羽根車のバケットに当たることで、羽根車が回転する仕組み。水に大きな勢いが発生する落差の大きい発電所などで活用される。


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図1:ペルトン水車射出ノズルのモデル


モデルのプリ処理

シミュレーションで使用するモデルは、6つのノズル出口部分に流れを安定させるための延長部が追加され、データはSTL形式で使用されました。

CADモデルは、STEP形式やIGES形式での取り扱いが多いため、CFD解析前にはプリ処理を行ったのちにSTL形式に移行する作業必要になります。

今回はオープンソースソフトウェアであるSalomeを用いて、形状の修正及びクリーンアップを行いました。

プリ処理での作業は、その後のメッシュ作成やシミュレーションに大きな影響を及ぼすため、重要な作業項目になります。


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図2:追加した延長部


メッシュモデルの作成

TCAE®では、ユーザーが構成した解析領域をコンポーネントと呼びます。

今回の解析対象となるモデルでは7つのコンポーネントで構成されており、メインとなるチューブと6つのノズルに分かれています。

この7つのコンポーネントをメッシングし、ひとつのメッシュモデルとする作業は、メッシュサイズを設定するだけという簡単な使用になっています。

流体解析用のメッシュモデルははsnappyHexMeshにより作成されますが、外部で作成したメッシュモデルのインポートも可能となっています。(msh形式,CGNS形式,OpenFoam形式)

 

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図3:TCAE®のGUI


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図4:射出ノズルのメッシュモデル


解析モデルの設定

TCAE®は、流体解析(TCFD)・構造解析(TFEA)・最適化計算(TOPT)を行うことができますが、このケースでは流体解析のみとなるのでTCFDモジュールを使用して解析モデルや各種設定を管理していきます。


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図5:GUI

解析モデルの各設定

・Simulation Type:Stator

・計算条件:定常計算

・物理モデル:非圧縮性

・コンポーネント数:7

・壁粗さ:なし

・入口速度:18.6 [m3/s]

・出口圧力:静圧 0 [m2/s2]

・乱流モデル:RANS k-ω SST

・壁関数:Wall functions

・乱流強度:5%

・作動流体:water

・基準圧力:1 [atm]

・動粘度:1.0×10E-3 [PaS]

・基準密度:996 [kg/m3]

・計算時間:48[core.hour]


TCFD®での設定では、コンポーネントグラフという、各境界やインターフェースがどのように接続されているかを可視化する機能があります。

設定したモデル内の流れが、入口から出口まで適切に構成されているかどうかは、コンポーネントグラフにより確認することが可能です。


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図6:コンポーネントグラフ


シミュレーションの実行

シミュレーション実行は設定内容のもと、メッシュ作成,流体計算と順に完全自動で進んでいきます。

もちろん個別での手動実行も可能であり、バックグラウンドでバッチモード実行にも対応しています。

TCFD®では、効率,トルク,力などの評価対象となるすべての量を後処理するモジュールが含まれており、これらの評価対象はシミュレーション中のモニタリングやHTMLレポート&csv形式での自動保存がされるようになっています。

メッシュ作成から解析結果レポートの作成までのすべてのワークフローが自動で実行されるので、ユーザーの作業時間を大幅に減少させます。


結果のポスト処理

結果の後処理は、GUIのベースとなっているParaviewの各機能を活用することができます。

あらゆる機能が搭載されたParaviewにより、ユーザーが希望する評価方法に柔軟に対応します。

 

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図7:結果評価時のGUI


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図8:流速コンター図

 

まとめ

解析結果としては、6つのノズルで均等な流量が射出していることを確認しました。

流速においても適切な結果となっており、圧力損失の観点からみても良好な結果となりました。


ペルトン水車射出ノズルのケースでは、ターボ機械の回転部ではない部分にフォーカスしたシミュレーションを行いました。

同一GUIかつ自動ワークフローによる解析は、利便性に優れているだけでなく、ワークフロー設定後はユーザーの作業は結果確認だけになります。

また、複数の境界条件や回転数による連続計算やライセンス無制限というメリットを生かすことで、より効率的に業務を進めることが可能となります。

TCAE®はユーザーの希望に合わせたワークフローを構築し、設計開発作業を的確にサポートします。