遠心ポンプのCFD&FEA+FSIシミュレーション

このケースでは、『TCAE®を用いた遠心ポンプのCFD&FEA+FSIシミュレーション』について紹介します

このケースの目的は、TCAE®を活用した遠心ポンプ特性の解析とそのワークフローを確立させることです。

現在リリースされているTCAE®21.09では、流体解析(CFD)・構造解析(FEA)・流体構造連成解析(FSI)を行うことができます。


TCAEチュートリアル遠心ポンプすべてのコンポーネント

図1:解析対象となる遠心ポンプ


解析形状の作成について

形状データには、STL形式のデータを使用しており、TCAE®ではCFD解析とFEA解析でそれぞれの形状データが必要となります。

CFD解析に使用するモデルは、遠心ポンプの流体入口から出口までの一連の形状を使用しますが、FEA解析については、単一のインペラ部のソリッド形状データを使用します。

形状データは通常、STEP形式やIGES形式のCADデータとして扱われますが、今回はオープンソースソフトウェアであるSalomeを用いてクリーンアップ、解析領域・境界の定義およびSTL形式への変換を行いました。


漏れのある遠心ポンプ-子午線ビュー

図2:遠心ポンプ断面図


遠心ポンプの形状データは、入口領域・回転領域・スパイラル領域・出口領域の4つの領域で構成しています。


TCAE-Pump-inlet-tube-component.jpg

図3:各領域の定義(左上;入口、右上;回転、左下;スパイラル、右下;出口)


FEA解析に使用するモデルも、CFD解析用の形状データと同じくクリーンアップを行っています。


TCAE-Pump-impeller-for-FEA-front.jpg

図4:FEA解析用のインペラ部形状データ


メッシュモデルの作成について

TCAE®では解析領域のことをコンポーネントと呼び、このケースでは4つのコンポーネントそれぞれに対してメッシュ設定を行うことができます。

CFD解析用のメッシュモデルは、snappyHexMeshにより作成され、各領域ごとにベースメッシュサイズやリファインメント(細分化)、レイヤーメッシュ(境界層)を設定します。

作成されるメッシュモデルは、大半がヘキサメッシュ要素(約85%)で、残りはポリへドラル要素となります。


TCAE TMESHCFDメッシュGUIグラフィカルインターフェイスポンプ

図5:CFD解析用メッシュモデルの作成(GUI)


TCFD Centrifugal Pump Mesh View

図6:メッシュモデル全体


FEA解析用のメッシュモデルは、内蔵されたツール「NetGen」を使用して作成されます。

TCAE®では、TMESHというメッシュ作成モジュールがあり、TMESHのタブ内にてすべてのメッシュモデルの管理や設定を行いうので、GUI上でのメッシュ設定の確認が容易に行うことができます。


TCAE TMESH Pump FEA Mesh GUI Graphical Interface

図7:FEA解析用メッシュモデルの作成(GUI)


Centrifugal pump FEA Mesh View

図8:メッシュモデル全体


CFD解析モデルの作成について

TCAE®でのCFD解析モデルの作成は、TCFDモジュール上で行います。

CFD解析モデルは、対象となるシミュレーションタイプに応じて、必要となる設定がタブに出現するので、順番に項目を埋めていくのみで解析モデルを構成することができます。


TCAE centrifugal pump CFD setup GUI

図9:GUIサンプル


CFD解析モデルの設定内容

・シミュレーションタイプ:Pump

・時間設定:定常

・物理モデル:非圧縮性

・回転速度:1770[RPM]

・出口条件:静圧 0[m2/s2]

・乱流モデル:k-omega SST

・壁処理:Wall function

・乱流強度:5%

・シミュレーションポイント(境界条件数):7

・作動流体:水

・基準圧力:1[atm]

・動粘度:1.0×10E-3[Pa⋅s]

・密度:996[kg / m3]

・CPU時間:2.5[core.hour/point]

・BladeToBlade機能:オン


TCFDでは、設定した解析モデルの流れの一連を、「コンポーネントグラフ」で確認することができます。

コンポーネントグラフは、解析領域がどのように構成されているのか、インターフェースが問題なく行われているかをチェックします。


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図10:コンポーネントグラフ


FEA解析モデルの作成について

TCAE®でのFEA解析モデルの作成は、TFEAモジュール上で行います。

FEA解析には、内蔵された解析ツール「Calculix」が使用されます。

また、ここではFEA解析モデル作成と共に、FSI解析の設定も同時に行います。


TCAE Franis Turbine FEA setup GUI

図11:GUIサンプル


FEA解析モデルの設定内容

・材質:steel

・密度:7800[kg/m3]

・材料構造:等方性

・ヤング率:2.1E11[Pa]

・ポアソン比:0.3

・拘束半径:100[mm]

・有限要素次数:2次

・CPU時間:0.02[core.hour/point]


シミュレーション実行について

TCAE®でのシミュレーションの実行は完全自動で実行されます。

これまでに設定したメッシュ、解析モデルといった全体プロセスを読み込み、クリックひとつですべてのワークフローを順に実行していきます。


TCFDによる流体解析では、効率、トルク、力、流量などの必要となるすべての量をモニタリングすることができ、収束確認に使用します。

またそれらの変数や解析モデルの基本設定は、自動でHTMLレポートとして保存されます。


シミュレーションのワークフローは、まずTMESHでCFDおよびFEAのメッシュモデルを作成し、次にCFD解析が実行されます。

その後、FSI解析のための流れ場データをTCFDからTFEAへ結果が受け渡され、FEA解析が実行されるという順になります。


TCAE interface GUI

図12:シミュレーション後のGUI


ポスト処理について

ポスト処理では、GUIのもとになっているParaviewの機能を用いて、多くの処理手法を活用することができます。

また、シミュレーションの残差結果や変数の履歴グラフなどは、レポートに保存されており必要に応じて適切な処理を行うことが可能です。


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図15: レポートに記載される各種プロットデータ


もちろん断面コンター図や流線図、ベクトル図といった一般的な処理も柔軟に行うことができ、ユーザーの評価したい内容に合わせたポスト処理に対応します。


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図16:FEA解析結果のポスト処理例



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図17:流線図


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図18:y+のXY断面表示


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図19:Kinematic PressureのXY断面表示


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図20:Kinematic Pressureの子午面平均表示


ターボ機械向けポスト処理機能

TCAE®は、ターボ機械向けの解析ソフトウェアという立ち位置もあるため、ここでは特徴的なポスト処理機能を紹介します。

遠心ポンプのようなシミュレーションケースの結果評価でもう重要なもののひとつに、ブレード間の流れ場があります。

TCAE®はこのブレード間の結果確認を行うために、「Blade to Blade View」という機能が備わっています。

この機能は解析モデル作成の際に設定を行うことで、解析結果としてブレード間の流れ場コンター図を自動取得し、レポートに記載させることができます。

流体がスムーズに流れるかや、効果的にブレードの前縁と接触するかを評価することができ、ハブとシュラウドの間の相対高さにおける任意のスパンで表示することができます。

今回のケースでは、前縁と後縁による流れ角が評価の対象となりました。


以下の画像は、流跡をLIC(Line Integral Convolution)形式でブレード間の平面に投影し、流れ場の相対速度で色付けしたものです。Blade to Blade Viewは、回転体(およびCFD結果)を2phi×1×1の辺の無次元六面体に変換する特殊な変換方法です。特にここでは、前縁と後縁(流れ角)が主な関心事となります。ブレード間のビュー画像は、自動化されたTCFDレポートの自然な一部となります。

図21:Blade to Blade View


また、TCAE®では、ブレード間の結果評価と同様に、回転対称となるオブジェクトを六面体オブジェクトに変換し、それをスライスして同じ半径座標の物理量をブレードに沿って表示することができます。

この結果は、ハブとシュラウドの間の任意の距離でブレードに合せて物理量をプロットすることも可能です。


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図22:ブレードに沿ったKinematic Pressureの表示


まとめ

今回は、TCAE®による遠心ポンプ解析のワークフローについて紹介しました。

どのケースにおいてもワークフローは同一となるため、解析設定は非常に簡単です。

CFD解析から連成解析までを行うことができるTCAE®は、ライセンス無制限という強力なツールであるため、作業効率の向上が考えられます。

外部メッシュによる解析も可能であり、今回のワークフローをもとにあらゆるケースに対応できるため、TCAE®はユーザーの設計業務を的確にサポートすることができると言えます。