この記事では、最適化ソフトウェアCAESES®の開発元であるFRIENDSHIP SYSTEMSが、MTU Friedrichshafenから受けたモデリングの依頼について紹介します。
MTU Friedrichshafenは、ディーゼルエンジン用の大型ターボチャージャを設計しており、ボリュートなどのエンジン部品の設計にCAESES®を採用しています。
そんな彼らのインペラ設計には、NUMECA Autobladeを使用して作成されたものもがあり、これらのモデルはASCIIフォーマット(.vda)でエクスポートされます。
このフォーマットには、基本的に子午線方向のハブおよびシュラウドのプロファイルとブレード形状の点データが含まれています。
これらのデータを用いてインペラの構造解析を行うためには、ASCIIファイルからソリッドボディを素早くワンクリックで作成するソリューションが求められます。
しかし当時、従来のCADソフトウェアで半自動化にトライしていたが、1つのデザインデータに対して約30分の労力が必要であり、さらなる改善が要求されていました。
最終的な目標は、ワンクリックかつ高速でCAESESがモデルを提供することとなります。
点データからソリッドボディを作成するために、CAESESにASCIIファイルを高速かつロバストで簡単にインポートする方法を構築するところからはじまります。
.vdaファイル
CAESESでは、ユーザーが任意のファイルを読み込んだり解析したりするための、独自機能をFeature definetionで定義することが可能です。
Feature definetionは直感的なスクリプト構築環境であり、CAESESのすべてのコマンドを利用することができます。
今回は、ASCIIファイルを開き、データの読み込み、そこからカーブやサーフェスを作成するスクリプト(feature)を作成しました。
作成されたスクリプト
このスクリプトによる機能では、GUIに表示された項目にASCIIファイルを指定するだけです。
ファイルを設定し、インポートボタンをクリックすることで、.vdaファイル内のすべてのデータが読み込まれます。
GUIでの設定(ファイルを選択し、緑三角ボタンをクリックしてインポート)
初期のスクリプトは1時間程度で完成し、インペラデータが可視化されました。
ここからスクリプトに改良/微調整を加えて、リーディングエッジ領域の自動分割(リーディングエッジ位置の特定)を実装しました。
可視化されたインペラデータ
ソリッドモデルを作成するために、ハブやシュラウドのサーフェスや、後工程でカットできるトレーディングエッジを追加しました。
要求される作業をスクリプトに追加していくことは簡単であり、本来手作業である作業を自動化することに成功しています。
ソリッドモデル作成に使用される追加サーフェス
ここからソリッドモデルとするためには、BRepと呼ばれるオブジェクトを使用します。
このオブジェクトはサーフェスまたはソリッドボディを受け取り、ブーリアン演算、交差、フィレット作成などの操作を適用することができます。
ブレードだけでなく、ハブやシュラウドのサーフェスを追加して、調整を行いました。
BRepオブジェクト
Brepオブジェクトを用いて最終的に作成された構造解析用モデルは下図のようになりました。
表面パッチそれぞれにカラーを設定することで、外部シミュレーションソフトにパッチ名を自動認識させます。
構造解析用ソリッドモデル
このシングルクリックのソリューションにより、MTU Friedrichshafenのエンジニアは、非常に多くの時間を節約することができるようになりました。
.vdaファイルを選択してインポートボタンをクリックし、数秒待ち、最後に底板の厚みや形状、シャフト直径など、ASCIIファイルではカバーできない追加制御を実施することで、簡単に解析用のソリッドモデルを取得することができるようになりました。
CAESESは最適化のみならずモデリング面においても効率的にユーザーの業務をサポートすることが可能となります。
最後に、この作品を公開することを許可してくれたMTU Friedrichshafenに感謝致します。