軸流ファンの流れ場解析

はじめに


軸流ファンは、主に空気やガスを効率よく流動させるために使用される機器で、換気、冷却、空気輸送など様々な産業分野で重要な役割を果たしています。その設計には、風量、圧力、効率、ノイズなどの性能が関わり、これらのパラメータを最適化することが求められます。軸流ファンの性能を最大限に引き出すためには、ファン内部の流れの挙動を正確に理解することが不可欠です。


流れ場解析は、ファン内部の複雑な流体の動きを可視化し、予測するための重要な手段です。流れ場解析を通じて、乱流や圧力損失、温度分布などの詳細な情報を得ることができ、設計段階での問題点を早期に発見し、改善策を講じることができます。また、ファンの運転条件や使用環境における性能予測にも役立ち、最適な設計やメンテナンス計画を立てるための貴重なデータを提供します。


本事例では、軸流ファンのシミュレーションで流れ場の挙動を可視化するとともに、AICFDに搭載されるターボ機械専用の後処理モジュールによる結果確認を行います。


■使用ソフトウェア:AICFD


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図1:AICFDの操作画面


この解析の活用場面


1.ファン設計を最適化したい

流れ場解析は、ファン設計の初期段階で非常に有用です。設計者はCFD解析を使用して、異なる羽根形状やファン構造が流れに与える影響をシミュレーションし、最適な設計を選定できます。これにより、無駄なエネルギー損失を減らし、効率的なファン設計が可能となります。


2.運転条件下の性能を評価したい

運転時におけるファンの挙動をシミュレーションすることで、実際の運転条件下でのファンの性能を評価できます。流れ場解析は、ファンが設計通りに機能するか、予想される圧力損失やエネルギー効率、キャビテーションの発生などをチェックするために使われます。AICFDには、キャビテーションモデルも搭載しています。


3.ファンの故障原因を把握したい

ファンの運転中に発生した不具合の原因を特定し、トラブルシューティングに役立てることができます。例えば、圧力損失の増加やキャビテーションなどの問題が発生した場合、解析によって羽根の状況や流れの乱れ、渦巻きなどの原因を明確にすることができます。これにより、発生した問題の原因究明を細部に渡り調査することができます。


解析概要


本事例では、回転ブレード17枚と静止ブレード19枚で構成される軸流ファン全体を対象としています。軸対称構造を有する軸流ファンの解析では、計算負荷軽減のためにワンピッチの周期モデルを使用することが一般的ですが、本事例ではAICFDの後処理機能や可視化機能の確認を目的として、あえて全周モデルでの解析を行っています。


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図2:モデル全体


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回転ブレード静止ブレード

図3:各ブレード形状と配置


使用したメッシュモデルは、.msh形式の約182万セルで、ブレード周りの流れを精度良く捉えることが可能な密度としています。

AICFDでは、内蔵されたメッシュ作成ツール以外にも、OpenFOAM形式,、msh形式、CGNS形式のメッシュデータを使用することができます。また、ワンクリックでメッシュ情報を確認することができるチェック機能があり、対象のメッシュデータの情報を迅速に確認することができます。


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図4:メッシュモデルの情報確認


流体解析の設定としては、空気(25℃)を作動流体とし、定常・非圧縮の解析モデルとしています。乱流モデルにはStandard k-epsilonを採用し、ファンの回転数は3000rpmとして、入口流速と出口圧力の条件下でのシミュレーションを実施します。


解析結果と効果


シミュレーション実行中は、計算残差の推移に加え、入口(Inlet)や出口(Outlet)における流量・圧力・速度などのモニタリングが可能で、解析の収束状況をリアルタイムに把握できます。これにより、解析が正常に進行しているか、早期に判断することができます。


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図5:残差のモニタリング


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図6:ブレードモーメントのモニタリング


解析完了後は、同一のGUI上でポスト処理を行うことができ、効率的な結果確認が可能です。分布図、ベクトル図、流線図といった基本的な可視化に加え、AICFDに搭載されたターボ機械向けの後処理機能「TurboPost」により、さらに高度な解析結果の可視化が可能になります。


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表面圧力分布断面圧力分布
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ベクトル流線

図7:各後処理結果


TurboPostでは、Blade to Blade(B2B)表示や子午面表示を通じて、ブレード通過方向や断面方向での流れの挙動を視覚的に確認できます。また、圧力分布や速度分布などをチャート形式で表示する機能も備えており、設計変更による性能差の把握や、問題の局所的な特定にも役立ちます。


これらの可視化機能により、ファン内部の複雑な流れ構造を直感的に理解でき、設計の妥当性検証や改善点の抽出がより迅速かつ確実に行えるようになります。


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Blade to BladeMeridional
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Blade LoadingCircumferential
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Hub to ShroudInlet to Outlet
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Turbo Surface
Turbo lIne

図8: TurboPostの各結果確認機能


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