現代のエネルギー産業において、タービンブレードはエネルギー変換の鍵を握る要素となっています。タービンブレードは風力タービンやガスタービンなどの回転機械において、流体の力を動力へと変換する役割を果たします。その性能向上は、エネルギーの生産効率や燃料消費の削減などに直結する重要な課題と言えるでしょう。
タービンブレードは、主に風やガスといった流体の力を利用して回転運動を生み出す際に使用される部品です。高い設計技術と材料工学の進歩により、タービンブレードは様々な産業で活用されており、発電所から航空機まで幅広い分野で重要な役割を果たしています。
タービンブレードの設計と最適化は、燃料効率の向上や運転安定性の確保など、エネルギー産業における課題に対する解決策として注目されています。最新のコンピュータシミュレーション技術や材料
工学の進展により、タービンブレードの形状、材質、冷却システムなどの設計要素を最適化することが可能となりました。これにより、ブレードの耐久性向上や効率的なエネルギー変換の実現が図られています。
本記事では、最適化プラットフォームAIPODに搭載されたアルゴリズムと、Bound-break機能を用いてタービンブレードの形状最適化を行いました。
最適化における計算は、タービンブレードのワンピッチモデルが使用されています。
図 タービンブレードのワンピッチモデル
1.設計変数: 9
2.目的関数: 全圧損失最小化
3.制約条件:
・流量
・出口流れ角度
・マッハ数
9個の設計変数に基づいてタービンブレードのモデルが定義され、ベースとなるCFD計算が実行されています。AIPODで最適化計算を実施する場合、形状変形の設定やメッシュ作成、ソルバへのデータ受け渡しを、ノードのドラッグ&ドロップにより、一連の最適化プロセスとして構築することができます。
図 ノードベースのプロセス管理
最適化アルゴリズムに搭載された機能であり、設計変数の不正確なパラメータ範囲問題を取り除くことが可能となります。
設計変数の範囲を正確に指定できない場合、余計な探索コストを増やすことなく設計変数に指定された範囲を選択的に超えることで、さらなる良好な結果の取得を実現します。
図 Bound-break機能による探索イメージ
(左側が設計空間として、右側に超えて探索を実施)
最適化計算に使用されるアルゴリズムには様々なものがありますが、今回AIPODの結果と比較するデータは、NSGA-IIとCounterpartによる最適化結果となります。目的関数である全圧損失の値は、0.177であり、下記の表では各アルゴリズムでの計算ケース数と目的関数値、ベースと比較した場合の結果向上率を比較しています。
表 各アルゴリズムの最適化結果
ベース結果 | 0.177 | ||
アルゴリズム | ケース数 | 目的関数値 | 向上率[%] |
NSGA-Ⅱ | 200 | - | - |
Counterpart | 150 | 0.151 | 14.69 |
AIPOD | 150 | 0.143 | 19.21 |
NSGA-Ⅱが、200ケースの最適化計算により有用な結果を取得することができなかったことに対し、Counterpartは14.69%の向上、そしてAIPODでは19.21%の向上を確認することができました。
Bound-break機能により、AIPODのアルゴリズムは不正確な設計空間を超えて、さらなる最良な結果を探索したことで、上記のような結果を取得することができました。AIPODの提供する最適候補解の各設計変数の値と、設計空間の範囲は下記の表となります。
表 AIPODとCounterpartの変数範囲1
Beta1 | Beta2 | Gamma | Omega1 | Omega2 | |
設計空間 | 10~50 | 10~40 | 50~85 | 5~40 | 5~40 |
Counterpart | 20.4 | 21.1 | 78.35 | 5.09 | 5.35 |
AIPOD | 20.95 | 21.42 | 79.79 | 3.29 | 7.09 |
表 AIPODとCounterpartの変数範囲2
Pshift01 | Pshift02 | Sshift01 | Sshift02 | |
設計空間 | 0.1~1 | 0.1~1.5 | 0.1~1.5 | 0.1~2.5 |
Counterpart | 0.22 | 1.33 | 0.69 | 1.4 |
AIPOD | 0.35 | 1.17 | 0.66 | 1.32 |
最適化技術の進化は、エネルギー産業の未来に大きな影響を与えることが期待されています。本記事では、タービンブレードの形状最適化をAIPODにより実施し、NSGA-IIとCounterpartとの結果比較を行いました。結果の比較と検討を通じて、性能向上の観点から、このケースにおいてAIPODがより適切なソリューションであることを確認することができました。
AIPODのアルゴリズムは、柔軟性と効率性において、タービンブレード設計における、複雑な設計空間においても高次元の最適解を見つけ出すことが可能であり、エネルギーの効率化を追求するという目的に対しても十分なサポートを提供することができます。
もちろんタービンブレードの最適化だけでなく、工学全般における設計問題への応用も可能であり、あらゆる業界の設計における業務効率化を支援します。