自動車エンジンにおける排気再循環(EGR)システムは、NOx排出の低減や燃焼効率の向上を目的として広く採用されています。EGRガスをインテークマニホールドに再循環させることで燃焼温度を抑えることができますが、EGR濃度の分布が不均一になると、各シリンダー間で燃焼状態がばらつき、性能や排出ガス特性に影響を及ぼす可能性があります。
本解析事例では、インテークマニホールド内のEGR濃度分布を解析し、流れの偏りや濃度の不均一性を評価しました。CFD解析を用いて、EGRガスの流入位置や流路形状が濃度分布に与える影響を詳細に検討し、より均一なEGR供給を実現するための設計指針を導出します。解析結果は、EGRシステムの最適化やエンジン性能向上に向けた設計改善に活用されます。
■使用ソフトウェア:TCAE
本解析では、パッシブスカラーを用いることでEGRガスの輸送を可視化し、各シリンダーへの分配状態を詳細に把握しました。また、複雑な過渡流れ場を正確にモデル化できるため、吸気システムのパフォーマンスや動作特性を高精度に評価することが可能となりました。これにより、EGRガスの流入位置や流路形状が濃度分布に及ぼす影響を明確にし、均一なEGR供給を実現するための設計指針を導出します。
解析結果として、EGRガスの濃度分布および流速ベクトル、空気濃度分布、温度分布を詳細に評価しました。解析結果から、インテークマニホールド内でのEGRガスの流れ方や、各シリンダーへの供給状態に関する傾向を明確に把握することができました。特に、EGR濃度の不均一性が確認される領域がある場合には、流路形状や流入位置の調整が有効であることが考えられるとともに、流速ベクトルの確認することで局所的な流れの偏りがEGR供給のばらつきに影響を与えていることをチェックすることができます。
本解析を通じて得られた知見は、EGRシステムの設計改善に活用でき、燃焼安定性の向上や排出ガス低減に貢献します。
図1:EGRガスの濃度分布および流速ベクトル
図2: 空気濃度分布
図3:温度分布