吸気ポートの最適化設計

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吸気ポートは、吸気マニホールドと燃焼室を結び、インテークバルブで開閉する仕組みを持つ、エンジンの空気導入システムを構成する部品です。

吸気ポートはあらゆる種類のエンジンに組み込まれており、ガソリンエンジンでは混合気体の形成に影響を与えます。

さらにエネルギー損失やエンジン性能は、吸気ポートの形状や構成に大きく左右されます。


この記事では、CAESES®を活用した吸気ポートの設計機能について紹介するとともに、STAR-CCM+との連携による自動最適化プロジェクトについて解説していきます。


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吸気ポートモデル


CAESESによる吸気ポート設計

CAESESは、吸気ポートの設計に効果的に活用されており、このアプリケーションのための設計機能を備えています。

吸気ポートの重要パーツであるダクトは、MetaSurface機能を使ってモデリングが行われます。

ここでのMetaSurface機能では、パラメトリックなダクトモデル断面形状を作成し、ダクトのパス(中心線)に沿うようにスウィープすることで、パラメトリックモデルを作成します。

MetaSurfaceを用いることで、形状変更に関数を追加するといった、自由度の高いモデリングを行うことが可能となり、柔軟性の高い最適化を行うことができます。


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最適化計算後の各デザインと設計空間


CAESESで吸気ポートを設計する際の重要事項

・バルブガイドやシャフトよる閉じを考慮した上で、流入経路に沿った断面積の分布や流量に関連するパラメータを直接制御できるようにパラメトリックモデルにすることが可能です。

・読み込んだ既存形状を変形させるために、モーフィングを使用することが可能であるが、モーフィングでの変形は、設定から変形までは高速ですが、変形に柔軟性に欠け、直接的な制御をすることができません。

・ロバストな設計デザインを生成することができ、様々なモデルを調査することが可能となります。

・任意の制約条件をモデルに組み込んだり、モニタリングすることが可能です。製造上の制約や、隣接パーツとの接触を考慮することが可能です。

・モデルは、CFD/メッシングツールに適したフォーマットで出力することが可能です。多くのフォーマットは、各サーフェスにつけたパッチ名に対応しており、CAESES以降のツールでメッシュ設定や境界条件の割り当てが正しく識別できる仕様とになっています。


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吸気ポートのCFD解析結果サンプル



STAR-CCM+との連携による吸気ポートの形状最適化

ここからは、CAESESとSTAR-CCM+を用いた吸気ポートの形状最適化プロジェクトについて解説します。

対象となったポートモデルは、ペントルーフ型燃焼室の4バルブエンジンに使用されているものになります。


ジオメトリセットアップ

最適化の最初のステップとして、CAESESでパラメトリックな吸気ポートモデルを作成し、7つの形状パラメータを追加しました。


パラメータ例1.Ellipse Factor

断面形状が円形or楕円形かを成業する楕円係数


Cross section shape change via ellipse factor

Ellipse Factorによる形状変形


パラメータ例2.Essentricity

断面形状が円形/楕円形からD字型になる偏心量


Cross section shape change via eccentricity parameter

Essentricityによる形状変化


パラメータ例3.Inlet Angle

吸気ポートの経路と水平面との間の角度


Change of intake port inlet angle

Inlet Angleによる形状変化


パラメータ例4.Inlet Height

吸気ポートの高さ


Change of intake port inlet height

Inlet Heightによる形状変


パラメータ例5.Straight Length

吸気ポートの直管長さ


Change of intake port straight length

Straight Lengthによる形状変化

 

STAR-CCM+との自動化システム

STAR-CCM+は、CAESESのsofrware connectorを使用して連携されることになります。

解析モデルの形状には、入口流れの条件を設定するための半球状のプレナムを追加し、パッチを識別するためのIDを含む色付けを行ったモデルを、Step形式で出力し、解析に組み込まれることとなりました。

シミュレーションは、実際のエアフローベンチと同等の定常的なコールドフロー解析が実施されました。


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解析に使用された吸気ポートモデル


最適化計算の過程と結果

吸気ポートの最適化は、以下の3つのステップで実施しました。

step1:Sobolアルゴリズムを用いたDoEを実行し、設計変数の影響や相関関係を調査

step2:サロゲートモデルと多目的遺伝的アルゴリズムによる最適化計算を行い、パレートフロンティアを取得

step3:step2と同様の最適化手法を用いてパレートフロンティアの細分化と、流量係数/タンブル比の2目的関数による検討

最適化プロセス全体では、約150の設計デザイン作成とCFDシミュレーションが実施されました。


CFD flow velocity results for different designs

最適化による形状変形とそれぞれのCFD結果


流量係数とタンブル比は、反相関の関係であり、設計変数が目的関数に与える影響は非常に多様な結果となりました。

例えば、ポートの上流側の断面偏芯はほとんど影響を及ぼしませんでしたが、下流側の断面返信は、2つの目的関数に対して顕著に反対の影響を与えることとなりました。


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最適候補とパレートフロンティア 


パレートフロンティアから、最適候補となりうるモデルはいずれも高い入口角度/短い直管長さが特徴であることが判明しました。

そして、最終的に選ばれた最適候補解は、ベースラインの結果からタンブル比がわずかに低いだけで、流量係数が大幅に改善されました。


まとめ

CAESESは、吸気ポート設計を効率的に行うための機能が豊富に追加されており、より最適な形状を取得するためのソフトウェアとして活用されてきました。

柔軟でロバストなフルパラメトリック最適化は、CAESESの大きな武器であり、ユーザーの業務効率向上を支援することが可能となります。