潜水艦の船首形状の水力音響および流体力学的最適化

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 潜水艦運転時に発生する自己騒音発生源は、3つのカテゴリーに分類されます。プロペラの騒音は回転速度が上昇することにより、キャビテーションが発生し、スクリューから発生するノイズです。流体力学的騒音は、潜水艦が水中を移動することから生じるすべての騒音源が含まれています。機械的騒音は、潜水艦に搭載されているエンジン、操縦機器、補助機械等から生じる機械音です。本事例では流体力学的騒音を対象とした事例であり、潜水艦モデルは、DARPA SUBOFFと呼ばれる一般的なベンチマークジオメトリを用いて実施しました。

 本事例では流動挙動を捉える定常RANS、非定常RANS、水力音響のFfowcs-William and Hawkings(FW-H)方程式を用いるため、汎用ツールであるSTAR-CCM+を使用して流体力学的騒音レベルを低減するための反復設計プロセスの開発を行いました。

 形状のパラメトリック船体モデルはCAESES®で作成し、自動作業ワークフロー内では船体形状の様々なバリエーションを作成して利用できます。船首の形は軸対称曲線を作成する次の方程式を使用してパラメータ化されています

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図1: パラメータ化された軸対象船首形状



 多目的最適化実施時の目的関数は船体の全抵抗、プロペラハブの1メートル後流位置での音響ノイズとなります。選択した最適化アルゴリズムは著名なオープンソースPythonlibraryLinearNDInterpolatorメソッドを使用し、最初にSobolアルゴリズムを用いたDoEを実施、最後にNSGA-IIアルゴリズムを用いた自動最適化を実施しました。CAESES®にはSobolやNSGA-IIなどのアルゴリズムのライブラリが含まれており、LinearNDInterpolatorメソッドはpythonスクリプトを介して実装し、カスタマイズ機能としてCAESES®と統合しました。

 

計算モデル

 全抵抗と水力音響は、それぞれ定常、非定常ソルバーを使用してSTAR-CCM+で解きました。SST k-ωは乱流のモデル化に使用し、音源に相当する船体上の非定常圧力データはFW-H方程式の入力値となります。下図で示すように、壁面上のy+値が約100前後となるように局所でメッシュ設定を実施し、船体表面にトリミングされたセルを使用して、潜水艦モデルの周囲に直行六面体メッシュを作成しました。



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図2: 潜水艦周りの非構造直行六面体メッシュ

 

自動最適化のワークフロー

 初めに、CAESES®で利用可能なSobolアルゴリズムを使って実験計画法(DoE)を実施しました。抵抗予測解析では400ケースを実施し、水力音響解析では更に40のケースを計算しました。このデータは、次のステップで予測モデルを構築するための入力として使用しました。


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図3: Sobolを使用したDoE結果

 

予測モデルは、LinearNDInterpolator関数を使用して応答曲面を使って作成しました。

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図4: 応答曲面

 

最後に、全抵抗と水力音響の応答曲面を作成し、自動最適化を実施、50個体数/10世代にてNSGA-IIアルゴリズムを実行しました。


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図5: NSGA-IIの最適化と多目的最適化パレートフロント

 

結果と結論

 21個の最適解候補ケースでは、最適な全抵抗と水力音響の多目的最適化のトレードオフ解となります。下図ではそれぞれの船体形状、全抵抗値、水力音響性能を比較した図となります。最大値を見ると全抵抗は5.6%改善、音響性能は最大3.5%改善となりました。


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