ポツダムプロペラのベンチマークシミュレーション

流体解析ソフトウェアTCAE®は、流体解析モジュールTCFDと構造解析モジュールTFEAにより構成されています。今回のケースは、メッシュ作成ソフトウェアPointwiseで作成されたメッシュデータを用いた流体解析モジュールTCFD®によるポツダムプロペラのシミュレーションベンチマーク検証について紹介します。今回参考にしたポツダムプロペラテストケースは、PPTCと呼ばれており、Schiffbau-Versuchsanstalt Potsdam GmbHによって性能解析および関連データが公表されました。このベンチマークの目的は、Pointwiseで作成された高度なメッシュデータを使用して際のTCFD®の流体解析結果を評価し、その結果を実測データと比較することです。このベンチマークでは、プロペラ効率,トルク係数,推力係数,前進係数の実測値と比較します。


Potsdam Propeller measurement facility

Potsdam Propeller cavitating mode propeller


メッシュデータについて

メッシュデータはPointwiseにて作成されました。異方性と等方性の三角形メッシュの組み合わせにより、プロペラ形状表面のメッシュを構築しており、前縁,後縁,チップなどの曲率の高い位置には、PointwiseのT-Rexアルゴリズムを用いてメッシュを作成しました。このアルゴリズムにより、曲率の高い部分に対して適切なメッシュ配置を行うことが可能になりました。内部メッシュについては、Delaunayアルゴリズムを用いて等方性三角形メッシュにより作成しました。またDelaunayアルゴリズムと等方性三角形メッシュにより、回転領域と外部領域のメッシュモデルを作成しています。


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TCFD®でのシミュレーション設定

・基準密度:997.71[kg/m3]

・動粘度:9.559×10-4[Pas]

・CPU時間:30[core.hours/point]

・乱流モデル:RANS kOmegaSST

・シミュレーションタイプ:Propeller

・時間設定:定常(Steady State)

・解析領域:2

・壁関数:Wall function

・平均流速:4[m/s]

・回転速度:900[RPM]

・流体モデル:非圧縮性

・メッシュサイズ:4.1M[cells]

・作動流体:水

・基準圧力:1気圧


TCFD®では外部メッシュの読み込みが可能なので、用意してあるメッシュデータを読み込んで、シミュレーション設定を入力するだけで解析を行うことが可能です。入口流速は前進係数を定義しており、速度は1.7[m/s]から5.9[m/s]までの11条件数を与えて解析します。TCFD®では、設定した11の条件数を順番に解析していき、1つの条件に対して十分な収束が確認されると自動的に次の条件に移って解析を続けます。もちろん解析中は、任意の変数に対してモニタリングによる収束確認行うことができ、結果の書き込みもいつでも可能となっています。


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結果の後処理

TCFD®には、プロペラ効率,推力係数,トルク係数,力係数,流量などの必要な結果を自動的に処理するモジュールが組み込まれています。全ての重要なデータはCSVファイルとHTMLレポートに自動保存されます。結果の可視化についても同一GUI上で可能となってます。

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結果1:プロペラ特性

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結果1では、前進係数に対するトルク係数,スラスト係数,推進効率の実測値比較になります。前進係数は入口境界条件により決まるため、取得データは条件数である11個になります。結果グラフの通り、TCFD®はすべての条件において実測値に非常に近い値を示しています。


結果2:ターボ機械専用後処理 子午面平均ビュー

結果2では、TCFD®に備わっているターボ機械向けの結果処理機能を用いて、子午面平均の可視化を行います。この可視化によりプロペラの流路で全圧がどのように変化するかなどの重要なデータを取得することができます。


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結果3:Blade to Blade view

結果3では、ブレード間の結果を可視化するBlade to Blade viewです。この可視化では、ハブとシュラウド間の一定の相対距離で、ブレード間の流れ場特性を調査するためデータとなります。この結果確認についても、TCFD®に備わっている結果処理機能により流体がどれほどスムーズに流れるか、そして流体がブレードの前縁にどのような影響を与えるのかを知ることができます。

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結論

今回紹介したPPTCケースでは、実測値比較を行うことで流体計算モジュールTCFD®の解析精度を検証しました。結果として、実測値と近似した結果データを得られたことで、TCFD®がプロペラ等の回転機械ケースに対して非常に有効であることを確認することができました。また、回転機械に対して有効な結果確認方法を用いることでユーザーが豊富な情報を取得し、設計開発に活かせることができると考えられます。