自航式SEP船の形状最適化

自航式SEP船(Self-Elevating Platform)の改造設計では、スパッドカン(ジャッキ部の足)のサイズを大きくすることで、海底にかかる圧力を下げるという手法がとられます。また、貨物容量を増やすために、喫水を増加させ、船の側面に沿ってスポンソン(安定性向上のための船体外側の張り出し)が追加されます。

 

アップグレードされたスパッドカンや船体形状は、流体力学的特性に大きな影響を及ぼします。特に船体に対して規模が大きく拡大されたスパッドカンは影響が表れやすいとされています。推進システムには変更を加えずに、12[kn]の設計速度による速度損失を最小限に抑えるため、余分な抵抗をできる限り低く抑える必要があり、その最適とされる形状を取得するためにCAESES®が用いられました。

 

過度な抵抗を回避するために、スポンソンの周りに合理化された追加形状を設計し、全体の船体形状として統合しました。図1の左からオリジナルモデル(スパッドカン青)、追加形状なしモデル(スパッドカン緑)、追加形状ありモデル(追加形状赤)となっています。

 

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図1

 

形状データの作成には、CAESES®に搭載されたCADツールを用いて作成され、設計変数が定義されました。その後、設計変数に対して構造要件や最小抵抗のための制約条件を付与しました。

 

設計変数による形状の変化が、抵抗と推進力にどのような影響を与えるかを評価し、船体にかかる抵抗を最小限に抑えるため、実験計画法により設計変数の感度分析を行い、取得した形状に対して船舶向け流体解析統合環境FINE/ MarineによるCFD解析を実施しました。これにより、より広範囲な条件から最適化に最も影響を与える主要な設計変数を特定しました。このステップにより、スポンソンの形状部の設計変数が、造波抵抗を可能な限り低減させることができると判明しました。

 

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図2

 

主要となる設計変数を確認した後は、CAESES®とFINE/Marineによる自動最適化システムによる勾配法を用いた最適化計算が実行されました。このステップにより、船体が目標とする設計速度を達成できる最終的な最適化形状が取得されました。

 

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図3

 

最適化計算後はCAESES®で最適形状とされたデータを出力し、さらなる詳細な解析やエンジニアリングに使用されていきます。このケースはCAESES®で高品質なジオメトリの作成が可能であり、優れた最適化計算及び自動化システムによる設計支援が可能であることをを示す優れた指標となります。