中国の海運業界を代表する企業のひとつであるMARIC(Marine Design & Reserch Institute of China)がCAESESを最初に活用したプロジェクトは、コンテナ船の船体形状最適化に関する研究でした。
MARICのエンジニアは研究にあたり、優れた性能を持つベースラインを選択して、18ノットと27ノットの速度における船体抵抗の削減を試みました。
ここでの制約条件は垂線間長、幅、喫水であり、これらを固定値としたうえで、排水量の変化は±0.5%までとしました。
まず、部分的なパラメトリックモデリングが採用されました。そして最適化の候補として、入水角、設計喫水線形状、船体前部の縦方向変位分布を選択しました。
CAESESが提供する形状変形技術により、船体形状の変形が定義されました。
図1:Free Form Deformationによる形状変形
図2:初期設計と修正設計の線図比較
この自動的な形状変形とCFD解析を連携されることで、18ノットと27ノットにおいてそれぞれ16%と4%の造波抵抗削減が達成されました。さらに、総抵抗はそれぞれ1.5%と0.6%の削減となりました。
しかし、MARICのエンジニアはSTEP1の結果に満足しておらず、「ベースラインモデルと部分的なパラメトリックモデリングでは、イノベーションが制限される可能性がある」と考えていました。そこで、さらなる可能性を探索するため、フルパラメトリックモデリングに移行することとなります。
新しく構築されたパラメトリックモデルは、元の設計とまったく同じである必要はありません。ここでのモデルは、以下の画像に示すように、元の設計と経験に基づく新しいイノベーションを組み合わせたものになります。
図3:新しい要素が加えられたパラメトリックモデル(青)
新しく作成されたフルパラメトリックモデルを使用して、船尾領域に注目した設計調査を実施しました。最適化設計による性能向上は驚異的なものであり、18ノットと27ノットにおいてそれぞれ47%と35%の造波抵抗削減が達成されました。また、総抵抗はそれぞれ5.3%と4.8%の削減となりました。
図4:18ノットでの波パターンの比較(上:初期モデル、下:最適化モデル)
図5:27ノットでの波パターンの比較(上:初期モデル、下:最適化モデル)