機械学習によるプロペラ最適化

はじめに


プロペラの設計では、最適な効率と性能を実現することが極めて重要となります。この度、AIとCFDを効果的に組み合わせることで、人気YouTubeクリエイター(RCTestflight) のDaniel Riley氏が主催したオンラインのプロペラ設計コンテストにて優勝することができました。このコンテストでは、『CAESES』と『AirShaper』を使用して、優れた効率を示す2つの高性能プロペラを作成することができました。


目的


コンテストの主な目的は、幅広い動作速度で最大の効率を達成できるプロペラを設計することでした。RCTestflightのDaniel氏は、実験的なアプローチにより性能を評価するために、プロペラを3Dプリントして、テスト船に取り付けました。彼は、2[m/s]からボートがフルスロットルで到達する速度(通常は約3.5[m/s])までの各プロペラのワットあたりの推力(グラム)を測定するという独自の効率パラメータを考案しました。積分値、つまり曲線の下の面積が最も大きいプロペラが優勝します。この包括的なアプローチにより、従来の単一ポイントの目標と比較してプロペラの性能をより徹底的に評価することができ、このチャレンジは複雑でありながら挑戦しがいのあるものでした。


トロイダルプロペラが話題になっているため、トロイダルと従来設計の最適化を別々に実行し、これら2つのタイプを相互にベンチマークすることにしました。


評価方法グラフ


プロペラ最適化アプローチ


CAESESによって多数の形状バリエーションを生成し、AirShaperによって分析を行いました。その結果は機械学習モデルに入力され、最適な設計を予測するために使用されます。

このプロセスにはいくつかの重要なステップが含まれます。


 1.パラメトリックモデル:CAESESのモデリング環境を使用して、従来型プロペラとトロイダルプロペラのパラメトリックモデルをそれぞれ構築しました。

 2.設計空間の探索:Sobolアルゴリズムを使用した実験計画法(DoE)を使用して設計空間をサンプリングしました。

 3.CFD解析:CAESESをCFDソフトウェアにシームレスに接続するAirShaperのAPIを使用して、各設計ごとに異なる速度で解析を実行しました。

 4.機械学習:CAESES内のCFD結果(トルクと推力)を使用して、代理モデルをトレーニングしました。これらの代理モデルを使用することで、検討中の設計空間内における任意の設計案の性能曲線図を生成することができます。

 5.最適化と検:性能曲線図の情報を使用して、各設計を動作範囲全体で単一目的関数の評価を行うことができます。最適な設計を見つけるために、勾配ベースの最適化が使用されました。


プロペラのパラメトリックモデル


トロイダルプロペラと従来プロペラのそれぞれにパラメトリックモデルを構築しました。もちろん、定義されたパラメータを使用することで、プロペラの形状を柔軟に制御することができます。設計検討のために各プロペラには6つのパラメータが選択されました。

これらのパラメータの範囲は、現実的な動作範囲(失速につながるピッチ角の回避など)と物理的制約(構造的完全性、ブレード間の幾何学的干渉、最大直径など)によって決定されました。


トロイダルプロペラ

コード長ブレードオフセット固定ピッチ
ピッチ分布可変ピッチ
迎え角


従来プロペラ

コード長コード分布
ピッチ
迎え角チップレーキチップレーキ半径


CFD連携と最適化


APIを通じて、CAESESはAirShaperと直接連携して各設計案の解析を開始することで、結果として得られるトルクと推力の値を取得することができました。この統合により、モデルのアップロード、パラメータの定義、結果取得のプロセスが合理化され、効率が大幅に向上しました。


CFD解析結果例


AirShaperの結果をCAESESに読み込んで、3つの異なる速度における推力とトルクの代理モデルを作成しました。代理モデルの出力を補間することで、前進比に対する推力とトルク係数の曲線を作成することができました。この情報と、あらゆる速度での船舶の抵抗がわかったので、CFD解析を実行しなくても設計空間内のあらゆる設計の全動作範囲にわたるプロペラ効率を簡単に計算できるようになりました。したがって、実際の最適化実行は、各設計をCFD解析で評価する必要がある直接的な最適化アプローチの場合のように数時間または数日かかることはなく、わずか数分で行うことができます。


結果


トロイダルプロペラの場合、最適化によってFRIENDSHIP SYSTEMSのWageningen B シリーズをベースにしたベースラインプロペラに比べて21%の改善が実現しました。

従来プロペラの場合、最適化によってベースラインプロペラに比べて驚異的な58%の改善が実現しました。また、コミュニティから新しく改良された設計が提出されたにもかかわらず、この設計はコンテストで2番目に優れた3Dプリント設計と比較して、依然として7%高い効率となりました。


トロイダルプロペラと従来型プロペラ


最適化された従来型プロペラは、細身のブレードと最大直径を特徴とし、最適化されたトロイダルプロペラよりも24%優れた性能を示しました。ただし、これは必ずしも従来型プロペラとトロイダルプロペラのどちらが優れているかについての決定的な評価ではありません。これは、設計が対象とする特定のアプリケーションケースと要件に大きく依存すると考えています。ただし、優れた従来型プロペラの設計は、優れたトロイダルプロペラの設計よりも簡単であることを示しています。特に、解析リソースを制限すると、トロイダルプロペラの自由度が高いという明確な利点が逆に欠点となる可能性があります。これは可変パラメータの数が、設計空間を十分に探索するために必要な解析数に直接影響するためです。


最適化された従来プロペラ最適化されたトロイダルプロペラ



本記事はCAESES®開発元のFRIENDSHIP SYSTEMSより提供されたものとなります。