本事例では、近年需要が高まっている無人航空機(UAV)の設計において、最適化アルゴリズムを活用した取り組みを紹介します。UAVは無線遠隔制御装置および内蔵型プログラム制御装置により制御され、無人固定翼機、無人垂直離着陸機、無人飛行船、無人ヘリコプター、無人マルチローター機など多様な形式に分類されます。利用用途も広く、航空写真や農業、災害救助、感染症の監視、地図作成、報道、映画・テレビ撮影など、多岐にわたっています。
最適化にあたり、無人航空機の翼形状を対象として、フルパラメトリックブレードモデルを作成し、自動化された設計とCFD解析を連携させることで、最適な設計案を見つけ出します。最適化による形状変化の過程は後述のアニメーションで可視化しており、設計パラメータが性能に与える影響を直感的に把握することが可能です。
■使用ソフトウェア:CAESES、CFD解析ツール
本事例では、ブレード形状(翼厚、コード長など)、ブレード数、角度といった設計変数や条件をパラメトリック化し、自動調整可能な設計環境を構築しました。モデルに定義された設計変数には、分布関数が定義されているため、関数の変化に応じて形状が変形するフレキシブルな構成となっています。
これらのパラメータに対し、CFD解析によって得られる空力性能を評価指標として、最適化を進めました。設計・解析・評価の流れはすべて自動化されており、多数の設計案に対して高速な評価が可能となっています。最適化には多目的最適化アルゴリズムを適用し、複数の性能指標(例えば揚力と抗力など)をバランス良く満たす設計を探索しました。
最適化の結果として、設計変数の自動調整により複数の案が生成され、各設計案の性能を効率的に評価することができました。特に、多目的最適化アルゴリズムの導入により、性能バランスの取れた設計案を探索できる点が特長です。
なお、ブレード形状に関しては、パラメトリックモデルの変化を表すアニメーションを以下に示します。各設計変数の変更が形状に与える影響を視覚的に確認できます。これは最適化プロセスの一部ではありませんが、設計の自由度や変化の方向性を理解する上でCAESESは有効なツールとなっています。
図1:ブレード数の変化
図2:翼コード長の変化
図3:ピッチ角度の変化
図4:翼厚の変化
図5:チャンバーラインの変化
図6:傾斜角の変化