ドローンプロペラのFSIシミュレーション

この記事では、TCAE®を用いたドローンプロペラのFSIシミュレーションについて紹介します。


今回のケースは、ドローンに装着されるプロペラ単体に焦点を当てた解析となっており、境界条件にOpening条件を使用したCFD解析と、FEA解析による連携ワークフローについて解説していきます。


ドローンのような小型無人航空機の開発では、モーターやバッテリーのみならずプロペラブレードの形状に着目することで、飛行性能を改善することができ、TCAEでは流体と構造の観点から対象のモデルを柔軟に解析評価することが可能となります。


ドローンプロペラの形状


CFD解析に使用するドローンプロペラのモデルは、以下のような構成となっています。

・プロペラハブ(propeller-hub)

・プロペラ前縁後縁(propeller-LETE)

・プロペラ正圧側(propeller-PS)

・プロペラ負圧側(propeller-SS)


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ドローンプロペラのCFD解析用モデル


このモデルではプロペラブレードのパートごとにメッシュサイズを調整するため、正圧側、負圧側、前縁後縁と分割したモデルとなっています。

もちろん単一のモデルデータでも解析はできますが、分割したモデルとすることでより形状に適した解析を行うことができます。


FEA解析に使用するモデルデータの要件はCFD解析用とは異なっており、サーフェスで分割されていないソリッド形式のデータを使用します。

今回はCFD解析結果をFEA解析にマッピングするFSIとなるため、FEA解析用モデルはグローバル座標がCFD解析用モデルと同じである必要があります。


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ドローンプロペラのFEA解析用モデル


解析モデルについて


今回のCFD解析モデルは、Opening境界を使用したものとなっており、解析領域は外部領域と回転領域の2つで構成されています。

球形の外部領域は、半球の上下で入口境界/出口境界が分けられており、0[Pa]のOpening条件が両方に設定されています。


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解析領域全体


回転領域は円柱形状となっており、3面すべてがインターフェース条件となっています。


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回転領域


FEA解析モデルはCFD結果をマッピングすることが設定されており、流体解析時のどのパッチのデータを活用するかを設定として追加する必要があります。

固定領域はハブの内側に設定することしました。


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TCAEのGUI


メッシュモデルについて


TCAEのメッシュ作成モジュールであるTMESHですべてのメッシュ設定の管理を行っています。

CFD解析のメッシュモデルはsnappyHexMesh、FEA解析のメッシュモデルは、Netgenによって作成されます。


今回のCFDメッシュモデルでは、プロペラ近傍の細分化はもちろんのこと、回転領域を囲むような四角の細分化領域を設定しています。

全体のメッシュ数は、約74万セルとなっています。


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全体メッシュモデルの断面図


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プロペラ近傍のメッシュ配置


FEA解析のメッシュモデルは、約6万セルとなります。


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FEA用のプロペラメッシュモデル


解析条件について


CFD解析条件は以下となります。


・シミュレーションタイプ:propeller

・非圧縮性モデル

・定常解析

・作動流体:空気

・粘性率:μ=1.8e-5[Pa.s]

・回転数:2000[RPM]

・乱流モデル:k-ω SST


FEA解析条件は以下となります。


・材質:UHMWP

・isotropic

・ヤング率:1.258[GPa]

・ポアソン比:0.46

・密度:940[kg/m3]


シミュレーションの実行


シミュレーションには、マシンのリソースに応じた任意のプロセッサ数を使用して実行します。

メッシュ作成、CFD解析、FEA解析のそれぞれに対してプロセッサ数を変更することが可能となっています。

シミュレーションの設定からメッシュ作成、モニタリングまでを同一GUIで行うことができるため、設定の修正は迅速に行うことができます。

シミュレーションが完了した後は、TCAEによるCFD/FEA解析結果の自動出力レポートにより、力や効率といった変数のモニタリング結果がまとめられます。


可視化による評価は、GUIとなっているParaviewによりあらゆる手法で結果を確認することが可能です。


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ブレード近傍の圧力コンター図


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流速コンター図


最後に


今回は、TCAE®によるOpening条件を活用したドローンプロペラの解析ワークフローについて紹介しました。

ワークフローからもわかるように、同一GUI上での作業・ライセンス無制限をフルに活用することで、効率面とコスト面に大きなメリットがあるでしょう。

オープンソースの利点と商用ソフトウェアの利点を両方兼ね備えたことで、設計開発業務への効率的なサポートを実現します。